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【開業支援コラム】Vol.10【設計・施工】動線分離とセミオープンタイプ

開業物件が決まると歯科医院の内装をどうするか考えることになります。その際大きな分かれ目となるのが「クリニック内の動線をどうするか」という問題です。現在の歯科医院開業を分類すると、大きく「動線分離タイプ」と「セミオープンタイプ(※1)」の2つに分かれており、割合的には動線分離タイプ2割、セミオープンタイプ8割くらいとなっています。(※1セミオープンタイプは、「セミクローズ型」「動線同一型」「動線非分離型」ともよばれています)

 その言葉からもある程度想像できると思いますが、院内の動線で、患者さんと診療スタッフの動線を分けるものを「動線分離タイプ」とよび、患者さんとスタッフと動線を一部共有するものを「セミオープンタイプ」とよびます。

 2つともメリット・デメリットはありますが、自分の理想としている診療を実現させるためにはどちらのタイプが合っているのか、よくよく考えた上でお決めいただくことをおすすめします。なぜなら、院内の動線を決めるということは、その時点で院内のベースとなる構造も決まってくるので、後で使い勝手が悪かったとしても簡単に変更することができないからです。

 それでは「動線分離タイプ」と「セミオープンタイプ」の違いや特徴について、詳しく説明させていただきます。  

動線分離タイプ

院内の動線で、患者さんと診療スタッフとの動線を完全に分けることを「動線分離」とよびます。言い換えると患者さんが動く領域とスタッフが動く領域を完全に分けて、待合室から診療室に患者さんが移動する際にスタッフと会わないようにしたり、バックヤードを見せないようにしている設計です。

【メリット】

① 診療スタッフや患者さんが落ち着いて治療やケアに専念できる
患者さんが、診療補助や準備・片付けなどで忙しく動き回っているスタッフの姿を目にしてせわしなさを感じてしまうと、落ち着いて治療を受ける事ができません。また、歯科医師や歯科衛生士など施術者も、動線分離でパーソナルスペースが確保できると治療やケアに集中することができます。
② 患者さんのプライバシーを確保することができる
動線分離タイプの歯科医院は基本的に個室診療室となるので、治療中の様子や会話の内容を遮断することができ、プライバシーを確保することができます。
③ 患者さんの安全性や安心感を確保できる
患者さんと診療スタッフとの動線を分けることで、移動中にスタッフと患者さんがぶつかり怪我をさせたり、薬剤などで衣類を汚してしまうなどのリスクがありません。

【デメリット】

① 動線を分離することで余計なスペースが必要になる
患者さんの動線とスタッフの動線を分けるということは、その分余計なスペースが必要となります。 待合室が狭くなったり、診療や作業をおこなうスペースが制限され仕事がしにくくなったら本末転倒なので、十分考慮することが必要です。
② 医院全体の様子を把握するのが難しくなる
動線が分離されると、その分見渡せる視野が狭くなるので、医院全体の様子を把握したり診療中のちょっとした異変に気付きにくくなります。
③ 女性スタッフの安全管理に関するリスク
例えば、患者さんが男性で施術者が女性スタッフだった場合、個室(密室)だと外部の目が届かないため、暴言を投げかけられたり卑猥な言動・行為をされるなどのリスクがあります。

②③については院内カメラを配備することで対応できます。しかし、コストがかかってしまうのがデメリットとなります。

セミオープンタイプ

診療ユニットを個室にせず、パーテーションなどで仕切ることで一定のプライバシーを確保しつつ、通路や診療室の一部を患者さんと診療をスタッフとで共有する設計です。患者さんが待合室から診療ユニットまで移動する際、通路などスタッフと同じ動線を使用することになります。

【メリット】

① 院内のスペースを効率的に利用できる
患者さんとスタッフとで動線を共有することで、院内のスペースを効率的かつ有効に利用できるようになります。
② 医院全体の様子を把握しやすくなる
視界が開けていて患者さんとスタッフとの会話も聞こえるため、院内の様子が見えやすく状況を把握しやすくなります。

【デメリット】

① 施術者が診療に集中しにくくなる
診療中に患者さんの出入りが視野に入ってきたり、スタッフから声をかけられることが増えるので個室診療室と比べると治療に集中しにくくなります。
② 患者さんのプライバシー面にやや難あり
セミオープンタイプの診療室は、診療ユニットとの間がパーテーションやスクリーンなどで分けられているため、診療中の様子や会話を他の患者さんから見聞きされてしまうことがあります。
③ 移動中の安全性が確保されない
スタッフが動き回るスペースと患者さんが移動するスペースが共有されているため、不意にぶつかってアクシデントが発生するなどのリスクがあります。特に診療が立て込み忙しいタイミングにはそのリスクが高まります。

以上が動線分離タイプとセミオープンタイプの特徴とメリット・デメリットとなります。

ちなみに、必ずしもどちらか一方を選ばなければならないかというとそうでもありません。例えば全部で5台ユニットがある場合、4台はセミオープンタイプにして、残り1台を完全動線分離の個室タイプにすることもできます。先生がめざす治療や方向性をデザイナーさんにしっかり伝え、どのような動線設計が理想的なのかお考えいただければと思います。