【開業支援コラム】Vol.15【人材・教育】開業時の採用・人員計画を考える

これから歯科医院の開業を予定しているドクター向けの支援コンテンツとして、これまで「お金」「設計・施工」というテーマでお話を進めてきました。今回は3つめのテーマとして「人材・教育」という領域にフォーカスしてお話を掘り下げていきたいと思います。
さて、これは歯科医院に限った話ではありませんが、会社や医院を経営していくための経営資源には「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の4つが必要とされています。ご存知の通り、歯科医院は労働集約型のビジネスモデルとなっているため、採用しているスタッフの人数と質が売上に直結してきます。
まず開業を決意した時点で、どのような規模感でスタートするのか、ある程度の想定はしているかと思います。その際に大きな分岐点となるのが「院長1人で診療できる規模」なのか「スタッフを採用しないと診療できない規模」なのかという点です。
院長1人で診療できる規模でスタートする場合は、特にこちらのテーマを深く掘り下げる必要がありませんが、もしスタッフを採用し複数人でのスタートを想定している場合、採用と教育をしっかり考えた上で開業の準備を進めなければなりません。
まず大前提として頭に入れておいて欲しいのは、「求人をしたからといって理想的な人材がちょうど良いタイミングで来てくれるとは限らない」という点です。言うまでもありませんが、人材というのは医療機器、歯科材料、内装資材といった「モノ」とは違い、お金を払ったからといってすぐに採用できるものではありません。求職者に「ここで働きたい」と思ってもらえるだけの医院の魅力や募集条件を整える必要があります。そして、どんなに良い人材でも「タイミング」が合わなければ検討すらしてもらえません。
人材採用は「水物的要素」が強いので、その点をよく理解しておく必要があります。だからこそ採用に詳しい専門家や業者、求人媒体の力も借りて、早めに準備をしておくことが大切です。
また、人材を採用できたことだけで満足してはいけません。院長が理想とするレベルの知識やスキルを持ち、医院の方向性や院長の考え方に共感してくれるスタッフになってもらうためには、院長の価値観やビジョンに共感してくれそうなスタッフを採用し、トレーニングを積んで育てていく必要があります。
それでは、開業準備中に人材・教育面で考えておかなければならないことを、いくつかピックアップさせていただきます。
①スタッフ構成
開業時に、どのような職種の人員を何人ぐらい採用する必要があるのか考える必要があります。例えば「最初ユニット3台の規模で開業するので、歯科衛生士2名、受付助手2名の計4名を採用予定」といった感じです。また、休診日を週何日にするかによって常勤(正社員)、非常勤(パート・アルバイト)で採用するかどうかも考慮しておく必要があります。
②人件費と運転資金
これも当たり前の話ではありますが、人を雇用するということはその分の人件費がかかります。開業する際は、自己資金や金融機関からの借入金で運転資金(医院を運営していくためのお金)を確保しているはずですが、その運転資金のうち、どれぐらいを人件費に充てることができるのか、事前にしっかりと考えた上で人員採用をおこなう必要があります。場合によっては開業コンサルタントや税理士にアドバイスをもらうことをおすすめします。
③採用のタイミング
医院開業時の採用で難しいのが「採用のタイミング」で、早すぎても遅すぎてもよくありません。当然スタッフを雇用し働き始めてもらった時点で賃金が発生するので、採用のタイミングが早すぎると診療収入が入ってくる前に人件費がかさみ、お金がどんどん出ていくことになります。一方で採用が遅すぎるのも問題です。新規で開業するということは、皆新人で横一線のスタートとなります。実際に診療が始まってからスムーズに運営するためにはトレーニング期間が必要となるので、ある程度余裕を持ったスケジュールで入職いただく計画を立てることが重要です。
④求人の方法
求人の方法ですが、大きく分けると「人材紹介」と「求人媒体(広告)」の2つそれぞれに分類ができます。それぞれの業態や媒体ごとにサービスの特性や費用が大きく異なってきますので、それらをよく理解したうえでどのサービスや媒体を使って採用活動をするのか決める必要があります。また採用は院長自身がおこなうことになりますので、面接や書類選考などで人材を見極めていくことも重要なポイントとなります。