COLUMN 歯科業界コラム

初心者でもすぐに分かる!~歯科医師に必要なお金の教養~

初心者でもすぐに分かる!~歯科医師に必要なお金の教養~

クリニック経営を成功に導く財務思考とは

本コラムでは、歯科医師の皆さまに財務管理の本質的な意味をお伝えします。単なる数字の羅列ではなく、クリニックの成長戦略に直結する財務分析の重要性を解説。診療に忙しい日々の中でも、財務データから経営課題を読み解き、持続可能な医院運営の具体的な方法をわかりやすく示します。

1. はじめに

歯科医院の経営は、質の高い医療サービスと、しっかりとした財務管理のバランスが成功のカギです。多くの歯科医師は、患者の治療に全力を注ぐあまり、経営の財務面を後回しにしがちです。しかし、正確な財務の知識は、クリニックの持続的な成長と安定を支える重要な力なのです。
医療は高度な専門性を持つ分野。そのため、財務管理は往々にして二の次になりがちです。けれども、医療技術と経営感覚を兼ね備えた歯科医師こそ、本当の意味で患者に貢献し、安定したクリニック運営ができるのです。本稿では、歯科医院経営に欠かせない財務の基礎と、実践的な活用法を詳しく解説します。

2. 歯科医院経営に欠かせない財務の基本~財務三表: 経営の設計図を読み解く~

⑴ 損益計算書(PL): 経営の今を映し出す鏡
損益計算書は、クリニックの経営状況を映し出す鏡です。この財務諸表は、特定の期間の収益と費用を細かく示し、経営成績を総合的に評価できます。月々の変化を丁寧に追っていけば、収益構造の変化や予期せぬ費用増加の兆しを早めにつかめます。
例えば、ある月の業務委託費や原価が突出して高くなっていたら、その理由を徹底的に調べる必要があります。新しい設備の導入、人員変更、材料費の高騰など、様々な要因が考えられます。こうした細かい分析を通じて、すぐに経営戦略を修正する柔軟さを身につけられます。

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⑵ 貸借対照表(BS): クリニックの健康診断書
貸借対照表は、クリニックの財務状態を映し出す健康診断書のようなものです。資産、負債、純資産の関係を正確に把握することで、財務的な健全性を多角的に評価できます。未収入金の管理、設備投資の適切な評価、在庫管理の最適化に役立ちます。
特に重要なのは、定期的な棚卸しと在庫管理です。使用期限切れの医療器具や材料、不要な在庫は経営を圧迫します。貸借対照表を活用し、在庫の回転率や保有コストを詳しく分析すれば、効率的な資産管理が可能になります。

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⑶ キャッシュフロー計算書: 資金の流れを読む
キャッシュフロー計算書は、現金の動きを可視化する経営の羅針盤です。「黒字倒産」のリスクを防ぐため、営業、投資、財務の各活動から資金の流れを詳しく分析します。利益が出ていても、資金の流れが悪ければ経営は危機に陥ります。
大型の設備投資や長期の未収入金は、一時的にキャッシュフローを圧迫することがあります。こうした状況を事前に予測し、資金繰りの計画を立てることが、安定した財務運営につながります。

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3. 会計の本質: 発生のタイミングを正確に捉える

収益と費用の計上タイミングは、歯科医院の財務管理で極めて重要です。発生主義に基づく正確な経理処理により、経営の透明性と予測可能性が高まります。例えば、4月に注文し5月に納品された医療器具の費用は5月に計上されます。
ただし、この会計処理の方法は税理士によって解釈が異なることもあるため、専門家との綿密な連携が欠かせません。キャッシュフローとは別に、正確な発生時期に基づいた経理処理が、信頼性の高い財務管理につながるのです。

4. 経営指標を客観的に見る

医療経済実態調査のデータは、歯科医院の経営戦略を考える上で貴重な指針となります。現在、医業収益の平均は個人の先生で約4,500万円、医療法人は1億300万円後半から1億400万円程度です。
これらの数値は単なる参考値ではありません。自院の立ち位置を客観的に理解し、今後の戦略を立てる重要な基準になります。個人クリニックの売上が8,000万円を超えると、法人化を検討する転換点になることが多いでしょう。

5. 法人化を考える: 財務の観点から

法人化は、税金対策以上の意味があります。売上規模や将来の経営ビジョンを見据えた戦略的な判断が求められます。法人化すれば新たに法人税がかかるため、単純な売上増加だけでは経営改善とは言えません。
むしろ、財務三表を徹底的に分析し、経営の最適化を図ることが先決です。税理士と綿密に相談し、クリニックの将来像や経営戦略に基づいて慎重に判断しましょう。法人化のメリットとデメリットを丁寧に比較検討し、自院に最適な選択を行うことが大切です。

6. おわりに

財務三表を定期的に分析し、データに基づいた経営判断を行うことで、クリニックの持続的な成長と安定を実現できます。財務の知識は、単なる数字の理解ではなく、クリニックの未来を設計する羅針盤なのです。
医療サービスの質と財務管理の質を同時に追求することで、本当に患者に貢献できる持続可能なクリニック運営が可能になります。

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