COLUMN 歯科業界コラム

歯科医院M&A戦略: 価値ある医院経営で成功する未来の選択肢

歯科医院M&A戦略: 価値ある医院経営で成功する未来の選択肢

~経営戦略としてのM&A~価値ある歯科医院のつくり方と成功の舞台裏

歯科医院の経営者として、将来の選択肢を考えていますか?近年、日本の歯科業界では後継者不足が深刻化する一方、M&A(合併・買収)が新たな選択肢として注目を集めています。かつては個人で経営を続けるか閉院するかの二択でしたが、今や外部資本とのコラボレーションにより、億単位の譲渡対価を得ながら診療を続けることも可能になりました。

1. なぜ今、歯科業界でM&Aが活発化しているのか

歯科業界でM&Aが急速に増加し、歯科医院の価値評価額も年々高騰しています。この現象が起きている理由は、歯科医院の後継者問題の深刻化と投資企業の歯科業界への参入が同時に進行しているためです。歯科医師免許がなければ実質的に医院を継げないという特殊性から、家族内での継承が難しいケースが増加しています。一方で、投資ファンドや大手企業は安定した医療事業への投資先として歯科医院に注目しています。

2023年には日本企業全体で4015件のM&Aが成立し(出典:株式会社レコフデータ「MARR online M&A回顧」2024年2月号352号)、平日1日あたり約16〜17件のペースで取引が行われています。歯科業界でも、1億円から数十億円規模の譲渡対価で売却される事例が急増しています。西日本のある医療法人は売上12億円の5医院グループを投資ファンドに譲渡し、譲渡後も理事長を続けながら3年間で6つの分院を新設することに成功しました。

歯科医院M&Aの活況は一時的なブームではなく、後継者問題と投資需要の高まりによる構造的な変化であり、今後も拡大が予想されます。

2. M&Aで高評価を受ける医院の特徴

M&Aで高く評価される歯科医院には、共通する明確な特徴があります。買い手企業は「持続可能な事業」であることを最も重視します。歯科医院は労働集約型ビジネスであり、院長個人のスキルや人脈に依存しすぎる医院は、譲渡後の事業継続リスクが高いと判断されるからです。そのため、「院長個人に依存しないシステム化された持続可能なクリニック」であることが重要になります。

高評価を受ける医院の具体的特徴としては、まず適切な規模感です。スタッフが十分に揃っている方が、誰かが離職しても事業継続性が高いと評価されます。次に、業務マニュアルの整備状況も重要です。明文化されたマニュアルがあれば、誰が引き継いでも同じように運営できるという安心感を与えられます。さらに経営管理の可視化も不可欠で、売上や利益だけでなく自費診療の割合やインプラント数など具体的な数値で説明できることが求められます。

関東地方で売上4億円のある医療法人社団は、このような条件を満たしていたため、譲渡後も院長が診療に集中でき、過去最高の売上を達成しました。M&Aで高評価を受ける歯科医院とは、院長個人に依存しない「システム化された持続可能な医療機関」であり、こうした特徴を持つ医院は譲渡価格の大幅な上昇が期待できます。

歯科医院M&A戦略: 価値ある医院経営で成功する未来の選択肢

3. 成功のタイミング: いつ売却を検討すべきか

歯科医院M&Aの成功には、適切なタイミングの見極めが極めて重要です。タイミングが重要な理由は、歯科医院の価値評価が「将来にわたって稼ぎ出す力」に大きく左右されるためです。売上や収益が下降トレンドに入ってからでは遅く、医院の持続可能性や発展性が高く評価されるタイミングで譲渡準備を始めることが理想的です。

具体的には、売上が上昇傾向または横ばいの時期がベストです。また、オーナーの年齢も重要な要素で、若い年齢での譲渡の方が、継続勤務への期待から高評価につながります。たとえば65歳で引退を考えているなら、その3年前の62歳頃から準備を始めるのが適切です。さらに、M&A後もオーナーが一定期間(通常2〜3年)残ることも評価を高める要因となります。

市場動向も重要で、歯科業界へのファンド参入状況や業界全体のM&A動向を見極めることで、最適な売却タイミングを計ることができます。M&Aの準備には時間がかかるため、十分な準備期間を確保することが成功の鍵となります。

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4. プロセスの実際: 譲渡までの流れと準備のポイント

歯科医院M&Aは複雑な手続きを伴いますが、適切な準備と専門家のサポートがあれば円滑に進められます。このプロセスが複雑な理由は、歯科医院が通常の企業と異なる特殊性を持ち、医療法人特有の法規制や手続きが必要となるためです。また、買い手側が行う詳細な調査(デューデリジェンス)に対応する準備も必要となります。

一般的なM&Aプロセスは、初期相談・企業評価から始まり、買い手候補への打診、面談、条件交渉、基本合意、買収監査(デューデリジェンス)、最終契約、クロージングという流れで進みます。特に重要なのが買収監査で、財務、法務、労務、事業の各側面から詳細な調査が行われます。

具体的には、決算書の適正性、役員構成や社員構成、雇用契約書の有無、労働時間管理の状況、診療の強み、チェアの稼働率、メンテナンス患者のリコール率など、数百項目に及ぶ質問に回答する必要があります。この過程は医院の問題点を洗い出すだけでなく、医院の魅力を買い手に伝える重要な機会でもあります。

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5. M&Aがもたらす可能性

M&Aは単なる事業売却ではなく、歯科医院経営の新たな選択肢として大きな可能性を秘めています。その理由は、M&Aが後継者問題の解決だけでなく、経営者のストレス軽減や診療への集中、さらなる事業拡大のための資金調達手段ともなるからです。外部資本との連携により、個人では実現困難な規模の設備投資や人材確保が可能になります。

実際に、西日本のある医療法人の理事長は譲渡後、「経営のストレスが軽減され、学術的な観点から自分がより良いと思える治療ができるようになった」と評価しています。また、関東地方のある医療法人社団の院長は「経営業務による負担から解放され、本当に自分が良いと思う治療に集中できた」と述べ、趣味の時間も確保できるようになりました。

これらの事例は、M&Aが単なる「引退」の手段ではなく、医師としてのキャリアの充実や生活の質の向上にもつながる可能性を示しています。歯科医院のM&Aは、経営者にとって新たな選択肢を提供し、診療への集中、ワークライフバランスの向上、さらには事業拡大の可能性を広げる戦略的な経営判断となり得ます。

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6. まとめ

今後の歯科医院経営において、M&Aは単なる後継者問題の解決手段だけでなく、働き方改革や診療の質向上、事業拡大の機会としても重要な選択肢となります。成功の鍵は、院長個人に依存しない持続可能な医院運営と、適切なタイミングでの準備開始にあります。

あなたの歯科医院の将来を考える際には、専門家のアドバイスを受けながら医院の価値を最大化する戦略を立てることで、キャリアをより豊かに締めくくることができるでしょう。まずは「運営体制の持続可能性」「マニュアル化の進捗」「経営の数値管理」などの観点から現状分析を行い、M&Aを視野に入れた医院づくりを始めてみてはいかがでしょうか。

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